そのとき、玄関のドアが開く音がしてはっとする。慌てて涙を拭い、身体を窓のほうへ向けたまま、リビングに入ってきた旦那様に「おかえりなさい」と声をかけた。
「ただいま」と返す慧さんにちらりと目を向ける。一日ぶりに見る彼は相変わらずクールな表情だが、声は少し穏やかさを感じる。
笑顔だよ、笑顔。仲直りのきっかけになるかもしれないんだから、笑ってお礼を言わなくちゃ。
自分に言い聞かせてから、くるりと彼のほうに身体を向けて、無理やり口角を上げる。
「昨日、この餞別を受け取りましたよ。綺麗なプリザーブドフラワー、すごく嬉しかったです。ありがとうございました」
久しぶりに明るい声で言うと、慧さんは「ああ」と頷き、ほんの少し口元を緩める。
「自分で花を選ぶなんて初めてだったから悩んだが、気に入ってもらえたならよかっ……」
そこまでで言葉を途切れさせた彼は、私をまじまじと見つめて「一絵?」と困惑気味に呟いた。笑顔を作っていたはずの私の瞳から、再び涙がこぼれていたから。
ダメだ……緩んだ涙腺はそう簡単に戻らない。慧さんの顔を見たらまた泣けてきてしまった。
「ご、ごめんなさい……! まさか慧さんからプレゼントをもらえるとは思わなかったから、感激しちゃって」
「ただいま」と返す慧さんにちらりと目を向ける。一日ぶりに見る彼は相変わらずクールな表情だが、声は少し穏やかさを感じる。
笑顔だよ、笑顔。仲直りのきっかけになるかもしれないんだから、笑ってお礼を言わなくちゃ。
自分に言い聞かせてから、くるりと彼のほうに身体を向けて、無理やり口角を上げる。
「昨日、この餞別を受け取りましたよ。綺麗なプリザーブドフラワー、すごく嬉しかったです。ありがとうございました」
久しぶりに明るい声で言うと、慧さんは「ああ」と頷き、ほんの少し口元を緩める。
「自分で花を選ぶなんて初めてだったから悩んだが、気に入ってもらえたならよかっ……」
そこまでで言葉を途切れさせた彼は、私をまじまじと見つめて「一絵?」と困惑気味に呟いた。笑顔を作っていたはずの私の瞳から、再び涙がこぼれていたから。
ダメだ……緩んだ涙腺はそう簡単に戻らない。慧さんの顔を見たらまた泣けてきてしまった。
「ご、ごめんなさい……! まさか慧さんからプレゼントをもらえるとは思わなかったから、感激しちゃって」