「知らないって……なにを?」
「いや、ごめん、今のは忘れて」
「忘れられるわけないじゃないですか! 教えてください」
「だよね。うーん……」
掴みかかる勢いで食い下がる私に、部長はしばし唸ったあと、「一応内緒にしててね?」と念を押して打ち明ける。
「社長って、色弱らしいんだ。大多数の人とは色の見え方が違っているんだよ」
──まったく思いもしなかった話に、一瞬すべての音が消えた気がした。
色弱がどういうものかは、社内でもその人たちに配慮したデザインの研修が行われているからわかるけれど、まさか慧さんが……!?
「資料の色とか見分けにくいから、瀬在さんが常についているんじゃないかな。完成した広告の確認も、ちゃんとした色味がわからないと困るだろうし」
部長が言うことは腑に落ちる。会議のときはだいたい瀬在さんが同行しているし、慧さんが社長に就任するタイミングで彼が秘書に抜擢されたのも納得がいく。
なのに、驚きのあまり、言葉を失くしていた私の口からは、「嘘……」とぽつりとこぼれた。
「いや、ごめん、今のは忘れて」
「忘れられるわけないじゃないですか! 教えてください」
「だよね。うーん……」
掴みかかる勢いで食い下がる私に、部長はしばし唸ったあと、「一応内緒にしててね?」と念を押して打ち明ける。
「社長って、色弱らしいんだ。大多数の人とは色の見え方が違っているんだよ」
──まったく思いもしなかった話に、一瞬すべての音が消えた気がした。
色弱がどういうものかは、社内でもその人たちに配慮したデザインの研修が行われているからわかるけれど、まさか慧さんが……!?
「資料の色とか見分けにくいから、瀬在さんが常についているんじゃないかな。完成した広告の確認も、ちゃんとした色味がわからないと困るだろうし」
部長が言うことは腑に落ちる。会議のときはだいたい瀬在さんが同行しているし、慧さんが社長に就任するタイミングで彼が秘書に抜擢されたのも納得がいく。
なのに、驚きのあまり、言葉を失くしていた私の口からは、「嘘……」とぽつりとこぼれた。