シルビアとスウはシルビアの働き先の工場にきていた。辺りは、この工場では見られないだろう美形にざわついていた。対面している工場長も心なしか顔が赤い。
「どうしたの？シルビアちゃん？年上の彼氏かな？とてもイケメンだね！」
と興味深々だ。シルビアは慌てて、
「いえ、昨日雪で家が壊れてしまって…その代わりに新しい家を紹介してくれるというとても良い人です！その際に、仕事を変わらないといけないとのことで…ここの仕事とても気に入っていたのですが…家が壊れてしまっては通うことができないので！新しい家から通える仕事を探さなければいけなくて…」
とまで言ったところで、横から、ヒグルおじさんが、
「家が！それは大変だ…！壊れかけてるの気づけなくてごめんね…でも、新しい仕事を探すのは大賛成だよ！おじさんでもここで働くのは危険が伴うのに女の子が働くのは、…危険すぎるからね…おじさんにできることは少ないけど、なにかあったら力になるからいつでも頼りにきていいからね！」
とまだ工場長の許可もでてないのに移る前提で話を進めている。ここは押しどきとばかりにスウは青い顔で、
「危険が伴うのですか…それは早急に移らなくてはなりませんね…新しい仕事はもう決まっておりますので、ご安心ください！私が仕えております男爵家で働いていただければと思っております！」
と初めて聞く単語を交えながら意気揚々と話している。え、男爵家？！と思っているシルビアを置いて話は進む。工場長が
「え！男爵家だって！！それなら安全だし、シルビアちゃんも誇りだよー！ちょっと待っててね書類用意してくるから！！」
と走り去ってしまった…
「え…ちょっまっ」
言葉にできないシルビアにヒグルおじさんは少し涙ぐみながら、
「男爵家で働けるなんて光栄だね！シルビアちゃん！立派になっておじさん嬉しいよ…」
ともう断れる空気ではない…そんなシルビアの表情を見ながらスウはうまくいったと満足げだ一番断れないだろうタイミングで仕事先を伝えたのだから…完璧だ。工場長が戻ってくると、送別会のような感じになり、もうそろそろ仕事が始まる時間だというのにみんな笑顔で見送ってくれて、シルビアは少し引きつった笑顔で、
「お世話になりました！ありがとうございました！新しい場所でも頑張ります！」
というしかなかった…