「ね、佳都ちゃん」
「っ、」
ーーぎゅ。
片岡くんの香りに包まれた。
首に回った腕。
頬に当たる髪がすこしだけ擽ったかった。
「…、な、なに?離れてよ」
「んー…ヤダ」
「っ、」
「俺がまだ佳都ちゃんとくっついてたいんだよ。許して」
片岡くんの紡ぐ言葉は、油断したらすぐ私のこころを乱すから嫌いだ。
平気で距離を詰めてくるところも、触れてくるところも、嫌いだけど───…期待している私もいる。
片岡くんに抱きしめられるのはこれで3回目。
彼が熱を出したあの時より体温は低いはずなのに、彼に包まれる私の体感温度は40度くらいある気がする。
熱を帯びているのはどっちだろう。
顔が赤いのは気のせい?
心臓がうるさいのはお互いさま?
「…ね、例えばだけど。もし俺が、」
───好きって言ったら、どうする?