なにそれ。そんなの勝手すぎるじゃんか。
だけど、でも、自分がきっと酷く複雑な顔をしているのも分かるからこそ、今片岡くんにこの顔を見られたくないという気持ちの方が強い。
「…はあ」
ため息をつかれた。
───その、直後。
「帰るよ」
「っ」
ぎゅっと手を握られ、片岡くんの温度が伝わる。
拒否する気力も意思もなかった。
「ホント、十分めんどくせーわ 佳都ちゃん」
「…うるさい」
「はいはい。話は家で聞くから大人しく歩いて」
手を引かれ帰路につく。
日野くんの“頑張って”の意味が、少しだけ分かった気がした。