ああ、なんか前もこんなことがあった気がする。
日野くんと片岡くんと3人で帰った日だ。
日野くんっていつも私たちを置き去りにして帰るから酷いと思う。
「…片岡く、」
「おせーよ」
「トイレ長すぎない?」と付け加えた片岡くん。
…失礼な。
トイレ自体は早かったもん。片岡くんがあの女の人たちに愛想を振りまいてるから出て行きづらかったんじゃないか。
ムッと口をとがらせて「片岡くんが誰にでも優しくするからじゃん」と小さく呟けば、地獄耳の片岡くんにしっかり拾われてしまった。
「…なにそれ、どういう意味」
すこしだけ低くなった声。
怒ってるわけではなさそうだけれど、意味を問われるのは予想外で言葉に詰まってしまう。