「いや、八樹が。しつこかったからとかさ、いつもは声かけてくる女の子にあんな風にひどい言葉言ったりしないから。嘘ついてんの、よくないよねって意味だったんだけど」

「え…」

「涼風さんも自分の感情に嘘ついてるみたいだね。ホント、2人とも素直じゃないっつーか…面白い」



日野くんから向けられる“面白い”の意味が、私はよくわからない。なんだか試されている気分だ。



嘘ついてるって、素直じゃないって、

わかんない。気づきたくない。
片岡くんに関わることでもやもやしたくないだけなんだよ。



「私は…、っ」

「大我、そろそろ帰ろーぜ」




日野くんが唐突に北村くんにそう言った。
北村くんはすんなりその言葉に頷いて「おう、じゃあまたなー」と背を向けた。




「え、日野くんっ」

「“頑張って”ね、涼風さん」




なにもかも急で頭がついていかない。

帰っていく2人の背中を見つめる私の脳内では日野くんが強調した“頑張って”の言葉がリピートされていた。