どれぐらい経ったのか──



まだ少しだけ温もりの残っているお兄ちゃんの手を握ったまま私が泣き続けている間、お母さんはお兄ちゃんを自宅に連れて帰る手配をしたり、担当の医師や看護師にお礼を言ったりしていたのだが、私は頭が真っ白で、何一つ耳には入ってこなかった。



集中治療室を出ると二人の男性が立っていて、私とお母さんを見て頭を下げた。


「……せん、せ………」




そこに立っていたのは、孝哉先生と光貴先生だった。


「明莉さんの副担任の藤野孝哉です。彼は私の弟で、ここの研修医の光貴です。このたびはご愁傷様でした……」


孝哉先生がお母さんに向かって挨拶し、二人は深々と頭を下げる。



お母さんは少し驚いた表情をしたけど、同じように頭を下げた。


「わざわざ……ありがとうございます。弟さんの藤野先生も、お噂は存じ上げています」