……さっきまでの真っ黒い感情が、まるで嘘のよう。
飲み込まれていく一方だった白い絵の具が、混ざることなく広がっていった。
それに比例して、私の心が暖かくなっていく。
「おやおや、何かあったのかい、芽穂」
当然のように対応をしてくれるおばあちゃん。
「ごめんねおばあちゃん。何でもないよ。でも、少しだけこうさせて」
おばあちゃんは、あら、と小さく声を漏らして、私の背中をポンポンと叩いてくれた。
それがあまりにも心地よくて、優しくて、絶対に無くしなくないと本能が叫んだ。
「おばあちゃん、私、今、すごく怖かったんだ」
「…」
「私だけ…どうして、私だけなのって、悔しくて、怖くて…っ」
すると、おばあちゃんは一旦私の両肩を持って距離を保ち、目を見つめてきた。
「安心していいんだよ、芽穂。おばあちゃんはいつでも、芽穂のことを大切に思ってるよ」
「…っ」
「辛くなったらこれからはいつでもおばあちゃんの所においで。おばあちゃん、待ってるからね」
「…うん」