そんな、心優しい家庭に生まれたかっただけなのに。

どうして、私は。





ーーー『おはよう』ーーー。





そんな時に聞こえたその声は、現実で聞こえたのか、夢の中で聞こえたのか。

とっさには分からなかった。

でも、すごく暖かくて、心の奥から聞こえるような。

そんな、心地の良い声。

……私は、この声を知っている。





「芽穂」

「…っ」

肩を揺さぶられて、やっと私は我に戻った。

「お、おばあちゃん…?」

私は頭の中の整理が追いつかなくて、間抜けな声で呼んでしまった。