「大丈夫、こんなことでクビになんてしないから」
「て、店長ぉぉぉぉぉぉ!」
私は嬉しさのあまり、泣きながら店長に飛びついた。
さっきまでは自分に泣くなって言い聞かせていたのに、とんだ矛盾だ。
でも、とにかく嬉しくて、とにかくほっとした。
私は恵まれていると、心の底から思った。
私が働いているのは駅前の大通りから少し外れたところにある居酒屋だ。
さっきも言ったとおり、家からも自転車で10分ほどの距離で、なおかつ時給が良い。
普段バイトを終えて、アパートに着くことができるのは23時30分過ぎ頃だった。
でも今日は大事なお皿を割ってしまったから、お詫びにと私からお願いして、居残りの掃除をさせて頂いたのだ。
そんなこんなで、家に着いた頃にはもう日付なんぞとっくに変わっていて、もうすぐ一時を回ろうとしていた。
すっかり深夜なので、私は音を立てぬように慎重に階段を上る。