「…優しかったはずなのになぁ」

そう呟いた私の言葉は、誰に届くと言うわけでもなく。

虚しく廊下の広さに消えていった。

もしかして、それは私のなかで勝手に作り上げた、彼の理想像だったのかもしれない。

彼を憎むあまり、私の良心が少しでも彼のことを良く思えるようにと作った、理想の、偽りの形。

でも、そんな空想が現実になるわけでもなく。



私は少し心が傷んだのを感じた。