「さあ、線香花火に火をつけよう」

気が付けばあれだけあった花火はもう線香花火だけになっていた。結菜と夏未は線香花火を手に取り、同時に火をつける。

「小さい頃、よくどっちの花火が先に消えちゃうか勝負したよね」

結菜がそう言い、夏未も「懐かしいね」と笑う。パチパチと花を咲かせる線香花火を見ていると、不意に結菜の頭に祖父から教えてもらったことが浮かんだ。

「線香花火ってね、綺麗な表現方法があるんだって。おじいちゃんが教えてくれた」

「ん?何々?」

遠い目をしていた夏未が結菜を見つめる。結菜は線香花火と夏未を見つめながら口を開いた。

「線香花火が点火して最初の頃、短い花火が重なり合っている瞬間を牡丹って言うんだって。次に、一番激しくて美しい瞬間を松葉。そして、火花がしな垂れるように下に伸びると柳。そして線香花火が消えていく最後をちり菊って言うんだよ」

「へえ〜。結菜ちゃんのおじいちゃん、物知りだね〜……」