「まぁ、この辺がよく出回ってるのかな?あとは、仕事熱心な看護士が、通勤途中で死んじゃって、今もまだ仕事するために病院を徘徊してるとか、入院してない病室からなナースコールが鳴ってたとか言うのもあったし。実は墓地の上に作られた、とか、戦争の時に死体収容所だったとか………まぁ、この辺は単なる都市伝説って感じかな?」
一通り話を聞いた俺はありがちな病院の怪談に然して恐怖感は抱かなかった。
それよりも「やっぱそれか」と言う印象の方が強い。
が、しかし羽山は違うかったらしく柄にも無くビビっては、それを悟られないように必死に取り繕うとしていた。
「そ、そんな子供騙し…どうせ作り話だろ!」
「ビビってんのかよ羽山」
やったぁ、と嬉しそうに晴彦はガッツポーズをして、自分がせっせと集めた怪談話が無駄ではなかったと知り、そんな声を上げた。
嬉しそうな晴彦と俺に「ビビってねぇ!」と言い返しながらも、その声はどこか裏返っている。
駅へと辿り着き、電車に乗っている間中、羽山は自分が怖がってなどいないことを何度も何度も言い返してきた。
俺たちはまた互いを見て肩をすくめる。
そういえば、と思い出したように声を上げたのは晴彦で、電車の中でヒソヒソと声を潜めて呟いた。
「あそこが、隔離病棟だったって話もあったよ。何かの伝染病患者をあそこに詰め込んで、看護士もろとも外に出さないようにしたって。だからあそこは今でも見捨てられた病院なんだっておばあちゃんが言ってたよ」