昔、サチコという女の子がT病院に入院していたそうです。


その子は歪な顔をしている所謂、奇形児でした。


目が一つしかなく、鼻は穴があるだけで人間の鼻のように立ち上がってはおらず、口は少し頬の方へずれて存在しています。


そして手の指は奇怪な方へと曲がったままで、脚の指も幾つかくっついて生えていました。


そんな奇形な身体で生まれてきた我が子を、両親は快く思えなくて、ある日の夜中、階段から寝ぼけているサチコちゃんを突き飛ばしました。


何度も階段の角に頭をぶつけて、一つしかない目はその衝撃でブチュ、とおぞましい音とともにコロコロとその軽い身体をぬめる液体を垂らしながら階段の上を転がり落ち、サチコちゃんも生々しい打音を響かせながら、受身を取る術も知らず成すがまま頭から踊り場までを落ちていきました。


物音を聞きつけてすぐに医者が来ましたが、サチコちゃんは打ち所が悪く死んでしまったそうです。



それから、その踊り場の鏡をサチコちゃんが死んだ12時丁度に見ると、目を失ったサチコちゃんがその奇形を更にグニャリと曲げながら、鏡を見た人の目を自分のものにしようとするらしい。