「だって、絶対に変なのにするでしょ」


「そんな人聞きの悪いこと言うなよー。ナツにぴったりのやつだから! 聞くだけ聞いてみて。よかったらこれにしてよ」


「……じゃあ聞くだけね」

 あてにはしていないが、このまま聞きもしないとまた旬がぶーぶーうるさくなるだろう。

 旬は嬉しそうに笑った。


「んーと、アイラブシュン、アットマーク……」


「却下」

 ニコニコしてる旬を一刀両断するかのように、奈津美はすっぱりと言い放った。


「えー! 何でー?」

 旬はまた不服そうに口を尖らせた。


「何でもなにも、そんなアドレスにできるわけないでしょ!」


「いいじゃん。分かりやすくて。アドレス交換した瞬間に彼氏いるっていうのもすぐに分かるし。あ、じゃあシンプルに、シュンアットマーク……」


「却下! そういう分かりやすさは求めてないの! そんな恥ずかしいアドレスにできるわけないでしょ!」


 まだ若いとか、そういうことができるキャラならメールアドレスにはっきりと入れられるかもしれないが、奈津美のキャラではどうしてもできないことだ。


「何で恥ずかしいの? 俺の名前なのに……」

 そう言って頬を膨らませる。女の子でもそうしないことであるのに、何故か旬がやっても違和感がなかった。


「旬の名前っていうか、彼氏の名前だから恥ずかしいの! ……もういい。もう変えたから」

 奈津美は携帯の選択ボタンを押した。


 旬とのやり取りをしながら奈津美の指はもうアドレス変更を行っていたのだ。


「えー。じゃあ何で聞いたの?」


「旬が言いたそうにしてたからでしょ。それに聞くだけって言ったから」

 つれなく言うと、旬はまだ不服そうだった。