携帯ショップを出たのは、十二時過ぎだった。
二人は、昼食を摂るために、今日は洋食のレストランに来た。
「意外と時間かかったなー。早めに行ったのに」
注文をしてから、旬が一息ついていった。
「うん。でも、休みの日だし、まだあたし達はマシだったんじゃない? あたし達の後ぐらいの方がもっと混んでたみたいだから」
奈津美達が携帯ショップを出た時は、奈津美達が来た時以上の混み具合になっていた。恐らく、奈津美達はギリギリでピークの少し前に行けたらしい。
「そうだよなぁ。待つ時ってかなり待つもんな。よかったよな。丁度昼頃に出れたし。ちゃんと欲しいのゲットできたし」
旬はショップの紙袋に入れた、新しい携帯を取り出した。
「うん」
奈津美も同じように旬とおそろいの携帯を取り出した。
「そうだ、ナツ。携帯変わったってことは、番号もメルアドも変わったんだよな。新しいの教えて」
携帯を開きながら旬が言った。
「あ……そっか。どうしよう。アドレス、変えようかなぁ」
新規で変えたので、携帯番号は勿論、メールアドレスも変わっている。
奈津美は新しい携帯の自局番号とメールアドレスを確認する。
メールアドレスは、初期設定のアルファベットと数字がランダムに並んだものだ。
これが一番迷惑メールなど来ないだろうが、これからどこかに記入しないといけないことがある時には難儀だろう。
「ナツ、アド変えんの?」
「……うん。その方がいいよね。でもあたし、こういうの考えるの苦手なんだけどなぁ」
そう言いながら奈津美はメールアドレス変更の手順を踏んでいく。
新しい機種ではあるが、そこまでの手順は大体の携帯端末に共通しているので、難しいことはない。
「んじゃあ俺が考えてあげよっか」
旬がニコニコして言った。
奈津美は旬のことをチラッと見ると、すぐに携帯画面に視線を戻した。
「別にいい」
「えー! 何でー?」
旬はあからさまにがっかりした表情になる。