「そうなの? でも携帯替えるほどってことは、そんなひどかったの? 言ってくれればよかったのに……つっても何もできなかっただろうけど」
とても心配した様子で旬は奈津美を見る。
「ううん……だって所詮はイタズラだもん。今日携帯変えたら多分おさまるよ」
「うん。まあ、そうだよな。それならいいけど」
本当に、それならいい。もう何もなかったことになってくれれば……
「でも、そういうのってどこから漏れるんだろうなー。俺も何回もメール来たりしたことあったけど、すっげーイライラするし」
「うん……ホント、そうよね」
相槌を打ちながら、奈津美は旬に対して申し訳ない気持ちで一杯だった。
イタズラ電話と聞いただけでこんなに心配してくれる旬に、奈津美は本当のことは言えないままである。
でも、イタズラ電話というだけでこんなに心配してくれるのだから、本当のことを言ってしまったらもっと心配をかけることになるんじゃないだろうか。
罪悪感がありながらも、言い出すことはできなかった。
『整理番号十九番のお客様、二番カウンターまでお越し下さい』
機械の音声アナウンスが流れた。
「あ、呼ばれた。じゃあ、先に行ってくるな」
「うん。後でね」
旬がカウンターに向かうと、奈津美は小さくため息をついた。
もう少ししたら、奈津美も呼ばれる。そしたら、携帯が変わる。
奈津美はそっと今持っている携帯を見た。
幸い、今日はまだメールも電話もきていないようだった。
このまま何もこなければいい。
あと、数十分もすれば、この携帯は解約されて、新しい携帯が手元にきているはずだ。
そうしたら、もう二度とメールや電話もこなくなるはずだ。
『整理番号二十番のお客様、一番カウンターまでお越し下さい』
奈津美の番号を呼ぶアナウンスがかかったので、奈津美もカウンターに向かった。