「ナツ、これにすんの?」

 何故か旬が嬉しそうに言った。


「俺、これにすんの。これの黒」

 旬は奈津美が持ってる機種の色違いの黒を手に取った。


「そうなの? これ、いいの?」


 どういう機種か分からないので、奈津美は旬に尋ねる。


「うん。なんか見た目がいいじゃん。今のやつ、けっこうゴツイから、次はシンプルなのにしようと思って」


「旬もあんまり機能ってこだわらないの?」


「んー……そこまで細かいのはいらねえかなぁ。意外と使わねえじゃん。俺はナツとメールと電話ができたらそれでいい」

 そう言って、旬はニコッと笑った。


 旬も奈津美と同じようなことを思っていた。何だか嬉しいような照れ臭いような……


「あ、でもやっぱウェブと写メもあった方がいいかな。結構使ってるし。それに目覚ましもないと起きらんないし……ワンセグもあったらあったでいいかもな。今のはないけど、これはテレビ見られるんだ」

 ウキウキとしながら旬は付け足す。


 少し前にはいいことを言ったと思ったら……


「結構こだわってるんじゃない」


「んなことないよー。これくらいは最低条件じゃん」


 言うことがコロコロと変わるのは、旬らしいといえば旬らしい。


「まあいっか。あたしもこれにする」

 もうめんどくさくなって、奈津美は機種を決めた。


 奈津美よりはこだわってる旬がいうのだから、あれば便利な最低限は揃っているのだろう。


「マジで? じゃあオソロだな」

 旬が嬉しそうに笑った。


 やっぱり、この反応は乙女だなあと、奈津美は密かに思った。