「桜、何か嫌なことでもあったか? 練習中ずっと浮かない顔してたけど?」

翌日、りくに心配された。

指揮者とあって歌っているみんなの顔を見るから、ずっと私が落ち込んでいることに気づいたのだろう。

休憩中に、そんなことを尋ねてきた。

「ごめんごめん! ちょっと、考えごとしてただけだから。気にしないで。次からは、ちゃんとするから!」

私は、慌ててそう言った。

「ならいいんだけど。本当に何かあるなら相談に乗るけど?」

「だから大丈夫だってば!」

りくに言えるわけがない!

もう誰にも気持ちを悟られないよう私は必死だった。