閉めた扉にもたれかかり、俺は「はぁ」とため息をこぼした。


何してんだろ、なんて。

自分の行動に後悔するのももう何回目になるだろう。


『拗ねてる顔してる』

そう言って俺の顔を覗き込んだ幼馴染みの瞳はいつも俺を見透かしていて。


そうだ。
俺は拗ねている。


だって、あの幼馴染みが。
小さくて、可愛い、あいつが。


夜に一人で買い物に行くなんて、危機感のないことをするから、俺は拗ねる他ないのだ。



隣に住んでるって言うのに、荷物持ちくらいするって言うのに、何で黙って一人で行くんだ。

声くらいかけてくれればいいのに。



なんて。
幼馴染みの危機感の無さへの心配7割と、
何でもないことでも頼って欲しいって言う俺のただの我儘3割を、あいつは見透かしているんだろう。


それが何だか悔しくて、あんな雑な別れ方をしてしまった。


ガキすぎるだろ、俺。



「史波、おかえり。玄関でしゃがみ込んで、また何かやらかした?」


ここにもまた、俺を見透かす人が一人。


「別に……」

「あんまり素っ気なくしてると、他の人に取られちゃうかもしれないんだからね」


誰のことを言ってるんだと、とぼける隙間与えてくれない母さんの言葉に、苦虫をすり潰したような気分になりながら、「わかったよ」と小さな声で返す。


「明日、迎えに行ってあげなさい。それくらいの優しさがないとダメよ」

「最初からそのつもり」

「夜にみんなでお祝いするとき用のケーキは準備しておくから、昼間は二人で楽しんできなさい」

「陸はチョコケーキな」

「二人はショートでしょ、わかってるわよ」


Vサインを向けてくる母さんに、「よろしく」と伝えて、自分の部屋に戻る。




「………明日か」

なんて呟いて、何度も二人で遊んだことはあるというのに、何だか変に高揚してきて。




その日の夜はなかなか寝付けなかったことを、母さんには悟られたくないと、目覚ましが鳴る頃考えた。