「………今日は、シナが泣いてるね」

「………………」


さゆみんが、私とシナに気を利かせて、先に駅前へと向かった。

私とシナは近くの公園で、二人並んでベンチに座る。



………シナ、怒ってるかな?

勝手に消えたりして。


本当は、ずっと傍にいたんだけど。




シナが5歳の時に、天界から始めて地上に来ていた私は、家族と逸れて迷子になった。

一人で道端で泣いていた時に、「大丈夫?」って声をかけて家族を一緒に探してくれたシナに恋をして、私は天界の掟を破ってしまった。



天界の住人は、地上に干渉してはいけない。

それは、悪事に手を貸したり、誰かを貶めたり、想いを寄せたりすることだ。




幼かった私は、死刑は免れて、想いを寄せる相手が天界の年で成人するまでは地上にいることを許された。

成人してしまったら、関わった人から記憶が消されて、私は透明人間のように一生地上を彷徨うことになっていた。




だから、シナがちょうど18歳になった時、私の存在は地上ではなかったことになり、今日までの間透明人間みたいに、シナたちの傍を彷徨っていたというわけだ。





今、シナたちが私を認識できるのは、シナの願い事のおかげなんだけど、細かく説明するのはちょっと大変だから簡潔にまとめるね。


人には、生きている間に一度だけ、絶対に叶う願い事がある。

『一生のお願い』ってやつ。


想いの強さが天界での基準値を超えてるかどうかとか、細かい決まりはあるんだけど、シナの願いは『一生のお願い』として、天界で受理された。



「また、俺の隣で~」ってやつ。






そのお願いの力によって、私はシナたちに認識されることが許されたというわけです。