「シナ、誕生日おめでとう」
最終バスの時間までどんどん時は刻まれていく。
どんなに止まってほしいと願っても、その願いが受け入れられることはない。
「唐突だな。……………ありがと」
少し驚いた顔をしているシナが、目を細めて笑う。
好きだよ、シナ。
声にならない言葉が、私の胸を締め付ける。
伝えるなら、きっと今。
告白する雰囲気にはぴったりだと、直感が告げている。
「…………っ」
喉元まで想いが込み上げた。
『告白は何年経っても記憶に残るからね!落ち着いて伝えなよ!』
脳裏を過ぎるさゆみんの言葉。
喉元まで込み上げた想いが、泡沫のように消えていく。
「ねぇ、シナ。もしも、もしもさ」
代わりに出た言葉は、
「私が明日、いなくなったらどうする?」
君の嫌いなもしもの話。
シナはいつもの呆れ顔。
でも、すぐに真っ直ぐ私を見つめた。
「そしたら俺は、見つかるまでずっとお前を探すよ」
意志を持たない涙が、頬を伝う。
私の心が、シナを好きだと泣いていた。