「ねぇ、シナ。もしも、もしもさ」
もしもの話が嫌いな君は、私がいつもこの言葉を口にすると、あからさまに面倒臭そうな顔をする。
「私が、天使だったらどうする?」
橙色の空に包みこまれながら、13センチ私より高いシナの横顔を私は見上げていた。
あ。
面倒臭そうな表情に、呆れが混じった。
「天使だったらなんかしてくれんの?」
「えー、そうだなぁ〜。シナのお願い事ひとつ、聞いてあげる!」
私がそういうとシナは、うーんと考える素振りを見せて、
それから、
「一つなら、大事な場面に残しとくわ」
と、思いつかなかったのか、考えることを放棄した。
「なんでも叶えてあげるのに〜。いつ使うのさ〜」
「いつかな。いつか」
もしもの話が嫌いな君は、いつも私のifの話を適当にあしらってくる。