百合の言葉に思考が停止する。


「な、何言って…。だってずっと…!」

晴人は私が転校して来た日からずっとこの教室にいて、ずっと私を影で支えてくれていた。

理解が出来ず三人を見るが冗談を言ってる雰囲気ではないのがみんなの表情で伝わる。


「茉莉花ちん。晴人君は茉莉花ちんが転校してくる数日前から学校に来てないよ?」


「うそっ…!そんなはずっ…」


百合がゆっくりと私の手を握る。


「茉莉花ちゃん。落ち着いて聞いて?天野君は茉莉花ちゃんが転校してくる前に事故に遭って、そこからずっと学校には来てないの」


「事故…?」

知らない間に震えていた手を百合が優しく包み込んだ。


「茉莉花ちゃんが転校してくる数日前、珍しく雨が降った日があったの。詳しい事はわからないけど、その日帰宅途中で事故に遭ったって…」


私が転校してくる数日前…。
私がこの街に引っ越して来た日…?


「先生に聞いてもそれ以上教えてくれなくて…。お見舞いに行きたいって話したんだけど、天野君のお母様すごくショックを受けてるみたいで今はそっとしておいてほしいっておっしゃってるみたいなの…。だから、今天野君がどういう状態なのかわからなくて…」

「ショックを受ける程だから、もしかしたらあまりいい状態じゃないのかもってみんなで話してて…」

「晴人君、クラスのムードメーカーだったんだ…。みんなと仲良くて…だからそれ聞いた時は私達もショックだった」


みんな、何を言ってるの?
だって晴人は確かにここにいて、私のそばにいて…。

「でもっ!晴人はいつもみんなの輪の中にっ…!」


そうだ、"みんな"だ。
私の知ってる晴人はいつも"みんな"の中にいて、誰かと一対一で話しているところは見た事がなかった。

だったら私は一体…。


「私、職員室に行って来る!」

「あ、ちょっと、茉莉花ちゃん!」


後ろでみんなが呼び止める声が聞こえたがそれを振り切って私は職員室へ向かった。

嘘だ!そんなの嘘だ!
みんなで私を騙してるんだ!
だって…じゃないとっ…!