「あ、そうだ、茉莉花。"バタフライ効果"って知ってるか?」


一通り笑い終えたのか、一息つくと晴人が伸びをしながら話しかけてきた。

「"バタフライ効果"?」

聞きなれない言葉にそのままその言葉を返すと晴人はそう、と笑顔で頷いた。


「"ブラジルで蝶が羽ばたくと、テキサスで竜巻が起こる"って」

「??」

私の困惑した表情を見て晴人は目を細めながら微笑んだ。


「まぁ今のは例え話なんだけど。要するに小さな行動を積み重ねていけば後に大きな変化が起こったり、ほんの少しの動きや変化によって未来に大きな効果をもらたすってこと」

側に咲いているシロツメクサを指で揺らしながら晴人はなにかを探しているようだ。


「羨ましいなって思う気持ちを原動力にして、自分はどんな風に変わりたいか明確にしてその為にまず何が必要か考えてみる。小さなことでもいい。それを積み重ねれば少しずつ新しい自分に近付けると思うよ」


お!あった、晴人は嬉しそうにシロツメクサの中からクローバーを私に渡した。
見てみてと私の掌にあるクローバーを指差す。


「…わ!すごい!四つ葉だ!」


「そいつも元は三つ葉になるはずだったけど成長過程の刺激で四つ葉になって、今茉莉花を幸せな気持ちにさせてくれてる。小さな変化が後に大きな変化をもらたしてくれてる…ってまぁこの解釈は虫が良すぎるかもしれねぇけどな!」


照れたように笑い、左手で襟足を触る晴人がすごく輝いて見えた。

そうか、誰かと比べなくてもいい。
今の自分を受け入れて新しい何かを足していけばいいんだ。

すごいな、晴人は…。
こうやって言葉や行動で私の心に変化をもたらしてくれる。

私も晴人みたいに大きな心で誰かを包み込めるようになりたい。


「じゃあ、まず…些細な事かもしれないけど、笑顔で挨拶が出来る様になる…ってそんな事からでもいいかな?」


「もちろん!茉莉花にとっては大きな一歩だよな!」


自分の出来る小さな事から始めていこう。
そうすれば、晴人の言うように後に大きな変化が生まれるかもしれない。


ううん、もう既に変化は生まれてる。
晴人と出会えた事で私の考えは少しずつ変わって、見えない未来に期待が出来るようになった。

晴人が側にいてくれるから…、前向きになれる。

そんな事言うときっと、まぁ俺様だからな〜なんて鼻高々にいつもの調子でおちゃらけるに決まってるから絶対本人には言ってあげないけどね。