けれど、異様なほどに怯える彩希を見て、二人は何かを悟ったらしい。

 芳哉も彬親も、どちらからともなく顔を見合せ、小さく頷きあった。

「おかげさまで、とても幸せだよ。
あなたが彼女を捨ててくれたから出逢うことが出来た。
そして私達も、彼女を全力で愛することが出来る」

 芳哉は、御簾の向こう側にいる男に向けて、そう冷たく言葉を言い放っていた。

 一方で、彩希はその放たれた声が芳哉のものだと、一瞬わからなかった。

 そんな挑発的な言葉を放つところなんて、彩希の前では見せたことがなかったから。
 
「彩希」

「え………?」

 突然名前を呼ばれて、声のする方を見る。
 けれど、目が合う瞬間、ぐいっ、と膝に乗せられた体をもっと密着するように引き寄せられる。

 そして、小刻みに震える体を抱きしめてくれた。
 
「彬親様……?」

「大丈夫だ、安心しろ。
あれは(・・・)、俺達も知っているからな」

 ぎゅうぎゅうと抱きしめながら、彬親が囁く。
 優しく、包み込むような声だった。

「俺と芳哉が、必ずお前を守ってやる。
何も心配はない。
だから今は、安心して俺の腕の中にいろ」

 その声に、彩希はほっとして、体から少し力が抜けていく。

 あぁ、やっぱり。
 やっぱり、この声がいい。

 優しくて、温かい、大好きな声。

 こんなにも心からほっとして、不安を拭ってくれるのは、この双子の旦那様達しかいない。