「貧血か?
女は貧血になりやすいって、聞いたことあるからな。
体調が悪いなら、倒れる前に遠慮なく横なれ。
お前の体が、なによりも一番大切なんだからな」

「よし、彬親。
彩希を連れて、今すぐ帰ろう」

「……え!?
あ、あの……っ!?」

 芳哉は彩希の顔を覗き込むと同時に、何やら深刻そうな顔をして彬親を振り返る。

 対して彬親も、まるで非常事態にでも遭遇したかのような真剣な顔で頷いた。

 いや。
 あの、お二人とも……。

 何だか深刻そうにお話しされていますけど、まだ宴に来てそんなに時間経ってないんですが……。

 しかも、まだお二人共、誰にもご挨拶なされてなかったはずじゃ……?
 せめて、帝や東宮様くらいには、ちゃんとご挨拶しましょうよ。

 このまま颯爽と、まさか挨拶もなしに帰っていいのだろうか。
 絶対良くない気がするんだけど、どうしよう。
 多分、今何を言っても聞いてはくれないと思うし。

 本当に、お二人とも。
 今すぐ宴を投げ出して、早く邸へ帰りたいんですね。