こんなことを続けていて、本当に宮様として成り立つのだろうか。

 何だか、ものすごく不安になったのは、けして。
 けして、彩希の気のせいではないと思う。

 彩希は返す言葉を見失い、ただ二人の顔を交互に見つめていた。

「俺達は基本的に動かないんだよ。
権力の塊みたいな俺達宮家の連中がうろちょろしてたら、周りが畏まって宴どころじゃなくなるんだ。
むしろ、邪魔になる。
だから、大体相手から挨拶に来るのが暗黙の了解になってるのさ。
いわゆる、権力欲しさのごますりだな。
それに、明確な敵意剥き出しの派閥争いが存在する宮家で、そんな仲良く挨拶ごっこなんかするかよ。
特に、後宮のお妃方。
俺は大嫌いだね」

 何だろう。
 ものすごく散々な言われようである。

 しかも、最後の大嫌いだね、の一言はいっそ清々しいくらいに力一杯言われた。

 父帝や母である中宮に対して不敬にならないかと、本当に心配だ。

 彩希はどこまで踏み込んで答えたらいいのか探りつつ、芳哉と彬親の顔を交互に見比べる。
 そして、小さく首を傾げてみせた。