固まる私を見て、その男性は整った顔に人好きのする笑みを浮かべる。


「おはようございます、叶井(かない)さん」


そう言った男性の瞳は――灰色だった。


「その節はどうも。こうしてまたお会い出来て、嬉しいです」


その灰色の瞳を見た瞬間、昨夜の記憶が蘇り、見間違いだ気のせいだと結論付けた光景が脳内で再生される。

月も星もない真っ暗な夜空に浮かんでいた人――あの時一瞬だけ目が合ったような気がしたその人物と、目の前の男性の姿が重なり合う。

こちらを見つめるのは、同じ灰色の瞳。


「なっ……あ……!」


失礼にも男の顔を、気持ち的には灰色のその瞳を指差しながら、あわあわと口を動かす私を見て、その人は確信したように笑みを深める。


「大切なお話があるのですが、お時間よろしいですか?」