「ところで叶井さん、そろそろ座りませんか?せっかく帰ってきたのに、立ちっぱなしだとくつろげないでしょ」

「……そもそも、あなたが居るこの状況でくつろごうとは思わないけどね」

「まあまあ、そんなこと言わずに。僕と叶井さんの仲じゃないですか」

「言っておくけど、私達は仲良しじゃないからね!」


仕方がないので釘を刺しつつその場に腰を下ろすと、男もまた立っていたその場所に腰を下ろす。
お互いに目一杯手を伸ばせば、指先が触れるかもしれないし、ギリギリ届かないかもしれない、そんな微妙な距離を空けて向かい合う。


「さて叶井さん、何か僕にして欲しいことはありますか?」

「強いて言うなら、すぐにでも帰って欲しいかな。今何時だと思ってる?」


とっくに日付は変わっているうえに多少とはいえアルコールが入っているので、実は物凄く眠たい。