「だって、出世でもない、苦手な上司がいなくなったのでもないってなると、残りはもう男しかないだろ。遂に結婚なのか?今日はその報告に来たのか?」

「だから、違うって言ってんでしょうが!第一、私にそういう相手がいないこと、大路くんなら知ってるでしょ」

「俺が知らない間に出来てることだって充分考えられるだろ。そもそもお前、もしも彼氏が出来たとして、俺に報告する気はあるのか?」

「…………」


言われて、考えてみる。
結婚するとなると話は別だが、彼氏が出来たくらいではわざわざ報告なんてしない。


「ほれ見ろ。だからつまりは、結婚ってことなんだよな?あっ……まさかお前、できちゃ――」


大路くんの視線が、テーブルで隠れているはずの私の腹部へと動く。


「この店の店主は客にセクハラ発言をしてくるとネットに流してあげようか」

「やめろよ。ネットって怖いんだからな。ていうか、今のはセクハラなのか?」


セクハラはされた方がセクハラだと思ったらセクハラなのだとどこかで聞いたことがあるが、別に本気で言ったわけでもないので、とりあえずほかほかの出汁巻き玉子を口に入れることでその問いはスルーする。