「……叶井さんは、ある意味凄いですね。鈍感もそこまで行くと最早清々しいです」


そう言った三永ちゃんの表情は、先ほどまで困惑だったのが、今では衝撃に変わっている。
それはまるで、荒れ狂う三永ちゃんを見ていた時の大路くんのようだ。

この二人、時折似たような言動を取ることがあるが、感性が似ているのだろうか。どうりで打ち解けるのが早いわけだ。


「……それってさ、絶対褒めてないよね?」

「そうですね。でも、バカにしているわけでもありませんよ。これはあれです。驚きを通り越して、感心しているんです。いや、感動と言ってもいいかもしれません」


一体どこに感動する要素があったのだろうかと首を傾げていると、顔見知りのお客さんとの対話がひと段落したらしい大路くんが、カウンターの中に戻ってきた。


「悪い、高校の時の同級生が来ててさ。会うのは久しぶりだったんで話が盛り上がって。二人共、何か飲むか?それとも何か食べるか?」


私はいつも通りお茶を頼み、それからチラッと隣を窺う。
三永ちゃんは、憐れむような眼差しで大路くんを見た後


「むしろわたしがご馳走しましょうか?大路さん」


そう言って、再び大路くんを困惑させていた。