「うん、あるよ。でもそしたら大路くん、突然男女間には友情が成立しないことの方が多いとか言い始めて」

「え……それってつまりは」


三永ちゃんが、ハッとしたように目を見開く。


「そうなの。私もね、それはてっきり、私のことは友達だと思ってないって意味だと思ったの。でも大路くん、それは勘違いだって、私との間には、ちゃんと友情が成立してるって言ってたから、凄くホッとしたんだ。おかげで、こうして三永ちゃんと二人でお店にも来れたし、これからも気兼ねなく通えるよ」


なぜだか、目を見開いたまま三永ちゃんが固まった。
しばらく待ってみたが反応はなく、どうしたのかと疑問を抱き始めたところで、ようやく動きがあった。


「……叶井さん、……いや、えっと……大路さんは、ほんとにそう言ったんですか?叶井さんとは、友達だって?」


見開いた目を元に戻し、今度は困惑顔で首を傾げる三永ちゃん。


「うん、確かに言ったよ。友達だってハッキリと」


嬉しかったので、とてもよく覚えている。
それに、この年になってお互いに“友達だ”と言い合う日が来るとも思っていなかったので、後から思い返すとちょっぴり気恥ずかしくもある。

そういう青春っぽいことは、若い子の、学生時代の特権だと思っていたから。