「まだ決定ではないですけど、叶井さんがそのポストに納まるのではないかともっぱらの噂です」

「おっ、遂に出世か、叶井」

「……ただの噂だから」


私としては、信ぴょう性がかなり低い噂だと思っているので、大路くんには言わないでおこうと思っていたのに、うっかりして三永ちゃんに口止めするのを忘れていた。


「そうですかね?わたしは、それを聞いた時すんなり納得しちゃいましたよ。叶井さんならあり得るなーって」

「俺もそう思う。叶井は主任にかなり期待されてたしな。それに、噂とは言っても本人の耳にも入るくらいなんだ。それはその方向でかなり話が進んでるってことなんじゃないのか?」

「噂はあくまで噂だから。それに私、主任の器じゃないし、期待もされてない」


大路くんが「全くお前は……」とどこか呆れたように息をつく。
三永ちゃんも、それに倣うように息を吐いた。


「ほんと叶井は、自己評価が低いよな」

「ほんとですね。叶井さんは全く、ご自分のことがわかっていません」

「……何なの、二人して」