「……おい叶井、三永ちゃんは本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。これは酔ったからこうなってるんじゃないから。発表されるまで二人の関係に気付けなかったことが、相当ショックだっただけだから」


結婚の発表は帰り際に社員を集めて行われたのだが、その時は流石に場所が職場であることもあってか、三永ちゃんは他の人同様目を見開いて驚くだけだった。

でも、こうして人目を気にする必要がなくなったら、我慢しきれなくなったのだろう。
多少はお酒の影響もあるのかもしれないが、それは大路くんが心配するほどの影響力ではない。

三永ちゃんは、心配そうな大路くんに向かって、いつの間に飲み干したのか空のグラスを突き出すと、また新しいお酒を注文している。今度は日本酒だ。

今日は、先輩としてドーンと奢るつもりでいたけれど、これは割り勘の必要性があるかもしれない。


「……三永ちゃん、別に部長に気があったとかそういうことではないんだよな?」

「ぜんっぜんないですよ。嫌いじゃないですけど、わたしのタイプじゃないですもん。ただわたしは、あの二人がそういう関係にあったことに気付けなかった自分の不甲斐なさが悔しいだけで」


そして、そのこみ上げる悔しさを爆発させて荒れているのだ。
三永ちゃんはそこまでは言わなかったので、私も黙っていたけれど。