否定的な私達に、三永ちゃんは「どうしてですか!?」と声を上げる。

いつもより声がだいぶ大きいのは、酔っているからではない。おそらく興奮しているのだ。
何しろ三永ちゃんは、とんでもなくお酒に強い。


「……おい叶井、三永ちゃんはほんとに酔ってないのか?」

「酔ってないよ。三永ちゃん、こう見えてザルだから」


何しろ三永ちゃん、のっけからビールを三杯連続で注文し、今その三杯目を空にしようとしているけれど、顔が全く赤くない。
むしろ、まだ一杯目をチビチビと飲んでいる私の方が、顔が赤くなってきている気がする。


「大路さん!次はハイボールください。濃いめで」


空のジョッキを突き出しての注文に、大路くんは迷うように三永ちゃんと私を交互に見る。


「ちょっと大路さん!どうしてそこで叶井さんの顔色を窺うんですか」

「……いや別に、顔色を窺ってるわけじゃ。ただほら、ほんとに酔ってないのかな……と」

「これくらいじゃ酔いませんよ!ね?叶井さん」

「三永ちゃんはね。私だったらとっくに潰れてる」


それでもまだ疑わしそうに三永ちゃんを見て、窺うように私の方も見ていた大路くんだが、やがて諦めたように三永ちゃんが突き出していた空のジョッキを受け取った。