「あとは……上の階はレストランしかないし、地下に行けば食料品が売ってるけど……」

「食料品…………ああ、食料品！」


どうやら、何か閃いたようだ。明らかに何か閃いた顔をしている。


「いいじゃないですか、食料品。聞いたことがあります。料理をおすそ分けしてもらったりした時は、その料理が入っていた容器に何か別の料理を入れて返すのがルールなんですよね？」

「……ルールってほど絶対的なものでもないと思うけど。それは、ただの気持ちっていうか」

「なら、パンが入っていたあのカゴに、別の食べ物を詰めて返せばいいと思いません？」

「いや、まあ……あなたがそれでいいなら」

「じゃあ早速、地下の食料品売り場に行きましょう！あっ、でもその前に」


下りのエスカレーターに向かって歩き出した男は、思い出したように足を止めて反対側へ。


「お昼にしましょう、叶井さん。確か上にはレストランがあると言っていましたよね」


男の言葉に頷きつつ、スマートフォンを取り出して時間を確かめる。
時刻は間もなく午後一時。お昼には丁度良い時間帯だ。