「あっ、ゴボウあった」


野菜室を開けたら、どちらも使いかけのニンジンとゴボウを発見した。


「じゃあもう一品は、きんぴらごぼうに決まりですね」

「ホウレンソウもあるから、おひたしもいけるけどね。もしくは、胡麻和え」

「んー……どれも捨て難いですが、やっぱり今日はきんぴらごぼうで!」


野菜室からニンジンとゴボウを取り出すと、男の隣に戻って作業台にまな板を出す。


「もうちょっとそっちに寄ってくれない」

「こんな感じでいいですか?あ、美味しそうなニンジン」


つみれの時もそうだったが、この男は美味しそうだと思うタイミングが早過ぎないだろうか。
まあ、ニンジンは生でも食べられるので、このタイミングでも間違ってはいないのだろうが。


「……あんまり生のニンジン見て美味しそうって言う人もいないと思う」

「そうですか?でも生のニンジンも美味しいですよね。祖父が畑で育てていたので、収穫を手伝った時にはよく畑でそのまま齧っていましたよ、おやつ代わりに」


それはまた何ともワイルドなおやつだ。


「そのお祖父さんも、魔法使いだったりするの?」

「しますよ。しかもこれが偉大な魔法使いで、魔法使いの世界で知らない人はいないですね。むしろ知らない人は魔法使いではありません」

「へー、凄い人なんだ」

「そりゃあもう!」