「……いや、あのね」

「これは……肉団子ですか?」

「じゃなくてつみれ。それで私が言ってるのは」

「つみれってあれですよね、肉団子の肉が魚バージョンのやつ」

「まあ、そうだね。とりあえず私の話を」

「魔法でやってもいいですけど、せっかくなので手でいきますね。僕、つみれ作るの初めてです」

「…………」


この絶妙なタイミングで被せてくるのはわざとなのだろうか。まあ、わざとだろう。だってタイミングが絶妙過ぎる。


「叶井さん、これはどうやってやるんですか?スプーンが二本ありますけど、二本使うんですか?それとも一本?」

「……貸して」


最早、私の問いが正しく伝わっていないことなんて問題ではない。
何しろ男は食べていく気満々だ。そのために手伝おうとまでしているのだから。

伝わらない以前に、男に聞く気がないのならもうしょうがない。これ以上は時間の無駄というやつなので、諦めてつみれの作り方を教えることにする。