「ああ!!?」
突然大声を上げた私に、男がビクッと肩を跳ね上げる。
「……どうしたんですか?急に」
「ち、遅刻してたの忘れてた……」
しかも遅刻が確定した時スマートフォンが手元になかったうえに、取りに戻ったら魔法使いを名乗る男と遭遇してしまったので、まだ遅刻の連絡をしていない。
おそらく今鏡を見たら、私の顔は血の気が引いて真っ青になっていることだろう。
とにかく一分でも早く、一秒でも早くと焦る気持ちのままに、せっかくじりじり離れたのを一気に距離を詰めてテーブルの上のスマートフォンに飛びつく。
震えそうになる指で何度か操作ミスをしながら、ようやく職場の番号を画面に表示させると、恐怖を押し殺して電話をかける。
そこから通話が終わるまでの数分間、たった数分といえども、私は不用心にも得体の知れない男に思いっきり背中を向けていた。
というか、今度は男の存在をすっかり忘れ去ってしまっていたのだ。
だからといって、この身に危険が及ぶようなことは何もなかったけれど。
*
突然大声を上げた私に、男がビクッと肩を跳ね上げる。
「……どうしたんですか?急に」
「ち、遅刻してたの忘れてた……」
しかも遅刻が確定した時スマートフォンが手元になかったうえに、取りに戻ったら魔法使いを名乗る男と遭遇してしまったので、まだ遅刻の連絡をしていない。
おそらく今鏡を見たら、私の顔は血の気が引いて真っ青になっていることだろう。
とにかく一分でも早く、一秒でも早くと焦る気持ちのままに、せっかくじりじり離れたのを一気に距離を詰めてテーブルの上のスマートフォンに飛びつく。
震えそうになる指で何度か操作ミスをしながら、ようやく職場の番号を画面に表示させると、恐怖を押し殺して電話をかける。
そこから通話が終わるまでの数分間、たった数分といえども、私は不用心にも得体の知れない男に思いっきり背中を向けていた。
というか、今度は男の存在をすっかり忘れ去ってしまっていたのだ。
だからといって、この身に危険が及ぶようなことは何もなかったけれど。
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