「叶井さんは、この世の不思議は全て科学で説明が付くと思っているのですか?では、それはとんだ思い上がりですよと言えば、僕の存在も信じてくれますか」


そんなに科学信者というか、科学絶対主義者ではないけれど、突然魔法使いという不思議を目の前に突き付けられてすぐに受け入れられるほど、純粋な人間でもない。

でもこの男が夜空に浮かんでいる、もとい飛んでいる姿を見てしまってもいるので、魔法使いなんてものは存在しないとも言えない。

そういえば、私はこの男が本物であるかどうかについて思い悩んでいるが、それ以前に奴は不法侵入者である。言わば危険人物ではなかろうか。


「そんなにじりじり離れていかなくても大丈夫ですよ、何もしませんから。現代では色々と制約があるので、叶井さんが思っているほど自由に魔法は使えないんです」


そんなことを言われたところで信用出来るわけもないのだが、逃げるとなったらやはりスマートフォンと財布は置き去りにするしかないのだろうなと考えながら視線をテーブルに向けた時、大変なことを思い出した。