「……その“大路くん”っての、やめてもらっていいですか」

「ですってよ、叶井さん」

「あなたに言ってるんです」


私も全く同じことを言おうとしていたが、大路くんに先に言われてしまったので黙っておく。


「……それで、あなたはどちら様で、叶井とはどういった関係で？」

「はい。僕は、叶井さんと親しくさせていただいている者で、お家にお邪魔させてもらったり、朝食をご馳走になったりする関係です」

「…………」


大路くんが、またしても固まった。


「もういいから黙ってて！」

「でも、訊いてきたのは大路くんの方ですよ？」


男は首を傾げながら、なぜ自分が怒られているのかわからないと言いたげな顔をしている。

私が更に言葉を続けようと口を開くと、それまで固まっていた大路くんが突然私達から視線を外し、フラフラとレジの方に向かって歩き出すのが横目に見えた。