「ちょっと!その言い方は誤解を招きかねないでしょ」

「でも事実ですし」

「どこが事実だ!」


チラッと大路くんの方を見ると、彼は目を見開いたまま完全に固まっている。


「あれ?どうしたんですかね、大路くん。困惑と衝撃と、他にも色んな感情がごちゃごちゃーっと混ざり合って思考が停止しているのを感じます」

「あなたがおかしなことを言うからでしょ」

「おかしなことなんて言っていませんよ。僕はただ、事実を言っただけで」

「いいからちょっと黙ってて」


不思議そうに首を傾げる男を一旦黙らせてから、「大路くん?おーい大路くん」と呼びかけつつ顔に向かってしばらく手を振っていると、ハッとしたように大路くんが動き出した。


「大丈夫ですか?大路くん」

「…………」


男が声をかけると、大路くんはまた微妙な表情を浮かべる。
私以外のお客にそんな顔をしているところなんて初めて見た。