「知り合いなのか?叶井」
「……まあ、うん。……知り合い……うん、まあ……そうなるか」
「その妙に歯切れが悪いのは何なんだ?」
本当のことを話せない以上、知り合いで済ませてしまうのが一番簡単であることはわかっているのだが、知り合いという表現に対して三永ちゃんに突っ込まれたことが記憶に新しいので、歯切れが悪くなってしまう。
「いや、ほら……まあね、うん……」
「どういうことなんだよ」
私の様子がおかしいせいか困惑気味の大路くんは、その困惑したままの視線を男に向ける。
いつもなら私以外のお客には店員らしく笑顔を絶やさず丁寧に対応しているのに、最初のいらっしゃいませ以降、完全に笑顔を忘れてしまっている。
「あなたが“大路くん”ですか。初めましてこんばんは」
「……“大路くん”?」
大路くんにはきっと、人好きがするように見えているはずの笑顔を浮かべて、男が挨拶をする。
それに対して大路くんは、怪訝そうな表情を浮かべているが、男はそれに構わず私の方を向いた。