ムスッとしながら茶碗蒸しを口に運び、玉子と一緒に口に入ったかまぼこに苛立ちをぶつけるように歯を立てる。

必要以上にかまぼこを噛み砕いてこま切れにしていたら、大路くんが呆れたように笑った。
いや、もしかしたら小バカにしたのかもしれない。


「お前、今酷い顔してるぞ」

「うっさい。それもこれも全部大路くんのせいだから」

「ひとのせいにするなよ」


子供っぽいとわかりつつもベーッと舌を出せば、また大路くんが笑った。
今度のは、明らかに小バカにしていた。


「ほら、茶碗蒸しに栗サービスしてやるから。これで我慢しろ」


カウンターの向こうから腕を伸ばし、大路くんが私の前にある茶碗蒸しの器に栗を一つ落とす。
これくらいで機嫌が直る単純な奴だとは思われたくないので、ひとまず大路くんを睨んでから、スプーンで栗を掬って口に入れた。

かまぼこの時よりは幾分穏やかに噛みしめていると、ドアの開く音がして、それに反応した大路くんが顔を上げてそちらを見遣る。