「叶井さん、外まで一緒に行きましょー」


同じようなタイミングでロッカーに鍵をかけた三永ちゃんと一緒に、ロッカールームを出る。
すれ違う先輩や同僚に「お疲れ様」と半ば憐れむような声をかけられながら外に出ると、並んで歩いていた三永ちゃんがこちらを向いた。


「それじゃあ叶井さん、今日も本当にお疲れ様でした。ゆっくり休んでくださいね。あと、気を付けて帰ってください。フラフラして転んだりぶつかったりしないように」

「ありがとう。三永ちゃんも、お疲れ様」


ペコリと頭を下げて三永ちゃんが歩き出すと、私もすぐに反対方向へと歩き出す。
バス停が見える所まで来ると、バスが信号待ちしているのも見えて、乗り遅れないように少し歩調を速める。

本当は真っすぐ家に帰るべきなのだろうが、どうにも今日は家に帰ってから自力でご飯を作れる気がしない。
それ以前に、帰ったらベッドに直行してそのまま眠ってしまいそうだ。

それくらい疲れているのだから仕方がない気もするが、こんな時こそ美味しい物を食べたい欲求も湧いてくる。

それでも、疲れた体を引きずってまで行くべきかどうか悩んだけれど、結局私は乗り込んだバスの車内アナウンスが家の最寄りのバス停の名を告げても、降車ボタンを押さなかった。
そして、そこから二つ先のバス停で降車した。