「魔法使いであることを誇りにしている人達もいますから、そういう人達の前では間違ってもそんなことは言わない方がいいですよ。プライドの高い人達って、面倒くさいですから」


その言いぶりだと“面倒くさい人達”に、目の前の男は含まれないということでいいのだろうか。だとしたら、私としては何も問題はない。

今後他の魔法使いに出会う予定はないし、そんな機会だってないだろうから、この男が私の前から去った暁には、もう二度と魔法使いと関わることなんてないのだから。


「では、この話はこれくらいにして、そろそろいいですか?」


男が、寝室を指差しながら問いかける。笑顔で問いかける。


「いいわけないでしょ」


私の答えに、男は不思議そうに首を傾げた。


「どうしてダメなんですか?今よりもっと快適な環境で眠りにつけるんですよ。叶井さんには、メリットしかないと思いますけど」

「寝室を見られるのは充分デメリットです!」

「そんなにジロジロ見たりしませんよ?」

「そういう問題じゃない!!」


同性どうしならまだしも、異性に、しかもよく知りもしない男に寝室を見られるのは嫌だというこの気持ちが、なぜ伝わらないのだろう。余計なことは感じ取るくせに。