「そこの可愛子ちゃんっ」
バシッ
「へっ!?」
左右の肩に手を置かれてビックリする
しかも相手は男で…
恐る恐る振り返ると
西藤!?
「ごめんね、ちょっと良い?」
いきなりn…!?
(突然手を握られ、猛ダッシュで走らされる)
※学校内では走らないように
ちょっと何なんですかーー!!?
ガラッ
誰もいない広い部屋、小道具や衣装、それに奥には舞台セット…ここって演劇部の部屋?
何で私がここに…
「さっ、ここに座って」
「あの、いきなりそう言われても私は」
「もうっ、焦ったいなぁ…変な事はしないからとりあえずここに座って、ね?」
へ、変な事って…しまった私とした事がまた妄想が始まりそうになってしまう
西藤先輩の指示通り大人しく座る
目の前には女優ミラーの化粧台とあまり見た事がない煌びやかな化粧品らが並べてある
「じっとしててね〜」
「はい…」
この状況で分かった事は今から私西藤先輩にメイクされるって事。
だけどその理由が分からない。
もしかして私相当美人からかけ離れた顔なのだろうかだから同情心で先輩がメイクしてくれてるって事なの〜(涙)?
「緊張してる?もっとリラックスしていいのよ?」
こんなフェロモン漂わせる色男がいたら、じっとしてはいられないよ〜(><)
黙々と私にメイクし続ける西藤先輩。
女をやめてしまいたいくらい、本当に綺麗な顔立ちをしている…鼻の高さ彫りの深さが外国人みたいで、なのに女性らしさのある目や唇。あぁ、こんな体験。ゲームや漫画の世界だけだと思ってた…
「うーん、どれにしようかなぁ〜」
アイシャドウのパレット手にして私の顔をじーっと見ながら嬉しそうに悩んでいる。
「この色にしよっと」
「目を閉じて」
「…はい」
アイシャドウを瞼に優しく塗っているのを感じ、その後リップが唇に触れる
目をつぶっていても先輩の吐息が聞こえて
バニラのような甘い香りが鼻に香る
「目を開けて」
ゆっくり目を開けると優しく微笑む天使が私を見つめている
ドキッ!
落ち着け…落ち着くんだ私!
「はい、出来上がり」
鏡でメイクしてもらった私の顔を確認
それはもう衝撃だった
こんなにも…綺麗になれるなんて…
この時思った。"女捨てたもんじゃないな"と。
「やっぱりメイクした甲斐があった〜」
「可愛いわよ。ふふ」ニコッ
きゃーー!可愛いっ、可愛いって言われたーー!
「俺に目の狂いはなかった。君、演劇部に入らないっ?」
「え…」
演劇部…?
「私がですかっ?」
「うん、ちょっど物語に必要なキャストが欲しかったのよ。しかも貴方にピッタリな役があって…我慢できなくて勝手にメイクしちゃった。」
「当然だから驚くかもしれないけど、返事はまた今度でいいわよ。けど俺もそんなに時間はないの。だから今日から一週間以内で決めてちょうだい。いい?」
「っ。はい。」
「うんっ、じゃあこれが入部届けと部活の活動内容のプリント」
「あ、メイクのままだと先生に怒られるから
マスクをあげるわ」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、失礼します。」
「またね、いい返事待ってるわよ〜」
はぁ…緊張したーー!