高瀬AI研究所附属高等学校。
この高校は、普通の高校とは違う、かなり特殊な高校だ。名前の通り、AI研究所を頂点として、附属で作られた高校だ。高瀬AI研究所では、AIを用いた様々な研究が行われているが、その一つに、『AIは結婚相手を決められるのか』という研究がある。
現代の日本では、一昔前と比べ、『婚活』に力を入れている大人が増えている。しかし、婚活で将来の伴侶(はんりょ)を決めることは、なかなか難しく、相手を見つけられないまま何十回も婚活パーティーに参加している人もいるらしい。また、最近では『婚活アプリ』というものも多く開発されているらしいが、それでも結果は婚活パーティーとほぼ変わらない。寧ろ手軽になった分、詐欺(さぎ)などの犯罪が増えているようだ。
そこで、高瀬AI研究所は、結婚を求めている人の中から、最も相性の良い相手をAIに選ばせることで、結婚までの道のりが今まで以上にスムーズに進むのではないかと考え、研究を始めた。そして、その研究の被験者になるのが、僕達高瀬AI研究所附属高等学校の生徒達だ。

「蛍貴〜〜!!!!!」

1人でぼんやりとこの高校のことについて考えていると、本田くんが僕の席へと猛ダッシュでやってきた。よく見ると、近くには他に2人の男子がいる。

「どうしたの?そんなに慌てて。」
「勝負だ!!!」

本田くんがかなり大きな声で言った。僕は思わず当たりを見回す。できれば悪目立ちはしたくない。

「勝負って、何の?」
「指スマ!!」
「指スマ?」
「何だお前、指スマ知らねーのか!?」

指スマなら知っている。
プレイヤーが手を握り向かい合わせになって、掛け声に合わせて一斉に親指を立てた数を当てる。予想した数は掛け声と共に言うといったゲームだ。

「知ってるよ。だけど、どうして急に?」
「それは、俺がそういう気分だからだ!」

本田くんが片手の親指を立てながらそう言った。
まったく。本田くんは相変わらずだ。昔から感情で動く。その度に僕は余計な苦労を背負ってきたように思う。しかし皮肉なことに、何故か憎めない。それは、彼が本当は素直で悪い人ではないと知ってしまっているからだ。

「で?やるのか?やらないのか?」
「やるよ。」

どうせ昼休みにすることなんてない。暇つぶし程度に仲間に入ろうと思った。
しかし、それは甘い考えであった。